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【Silver & Sound -音楽家を刻む銀塩写真】モノクロフィルムで撮影する音楽家

#023:『アーティスト写真』と『宣材写真』の境界線



テーブルの上に楽器を置いて一点を見つめる女性


今回はアナログモノクロームの話を少しお休みして、私たちが日常的に使っている『アーティスト写真』という言葉について深掘りしてみたいと思います。


『その「アー写」、本当に使えますか?』


撮影中、モニターに映し出されたドラマチックな一枚に、お客様と一緒に盛り上がる。

カメラマンとして最高に嬉しい瞬間です。

しかし、実はここに少しだけ注意が必要な落とし穴があります。

「イメージ写真」は撮られる側からしても分かりやすく、ストーリーの中に自身の身を置いたワンカットになり、その姿が異次元のものになります。 しかし、実際には使用場面が少なく、結局はかっちりしたスタンダードな「プロフィール写真」をメインに使うハメになった…という例は少なくありません。

その「プロフィール写真」と「イメージ写真」は何がどう違うのか?定義はあるのか? 少々、理屈っぽくなりますが私なりの見解を紹介していきます。



白背景で撮影されたサックス奏者のプロフィール写真


「プロフィール写真」は、写真家にとっての基礎体力


まずは、最もベーシックな形から見ていきましょう。

一見地味に見える『プロフィール写真』。

しかし、これこそが音楽家の活動を支えるインフラです。


  • 定義: 白ホリスタジオで撮影された、フラットで清潔感のあるウエストショット。

  • 用途: 演奏会のパンフレット、教室内での講師紹介など、「本人がどのような人物か」を正確に伝えるためのもの。

  • 役割: 情報を伝える「記号」としての写真。


一般的に言われる『プロフィール写真』とはこうした目的がメインだと思います。

撮影する方にとっても、最も基本的なライティングを組み、誤魔化しの効かない撮影スタイルであると言えます。ここが全てのスタートです。



お洒落な家具が並ぶ部屋に夕陽が差し込み物思いに耽る女性が座る

現場の「ハイテンション」に潜む罠 「イメージ写真」を「無駄な写真」にしないために


一方で、写真から音楽や物語が聞こえてきそうなカット。

これを私は『イメージ写真』と呼んでいます。


撮影中、モニターに映し出されたドラマチックな一枚に、お客様と一緒に盛り上がる。

カメラマンとして最高に嬉しい瞬間です。

しかし、実はここに少しだけ注意が必要な落とし穴があります。

その場のノリや雰囲気だけで撮ったストーリー性のある写真は、時に『使いどころのない、もったいない写真』になってしまうことがあるのです。 『イメージ写真』を必要とする明確な理由とそのイメージが必要で、また、その構図も撮影する上で重要な要素になります。


例えばフライヤー用であればテキストスペースが必要になりますし、CDジャケットであれば色々なテキストが入ることが前提となります。

一昔前であれば雑誌の表紙を撮影する際にはモデルの頭上に大胆のスペースが必要でした。

雑誌名がそこに入るからです。それで全体のバランスが取れるように構図するのが一般的でした。


「イメージ写真」を撮影する際には、その使用目的が明確であることが大前提となります。 ただ単にストーリーを雄弁に語りたいなら、今の時代はMVやPVといった「動画」に分があります。

スチール写真の役割は、その世界観を凝縮した「ロケーショナル・ポートレイト」として、見る者の想像力を喚起する一点に集約されると思います。



黒背景のプロフィール写真。
サックス奏者の女性の立ち姿をドラマチックに写している

光で作るドラマ


面白いのは、設備が同じでも『光』だけで定義が変わってしまうことです。

2枚目の写真と同じ環境ですが、ライティングと露出を変えることで背景を黒く落とすことができます。

それだけでも単なる『プロフィール写真』から『イメージ写真』へと変貌します。

ホリゾントスタジオでの単純な撮影であったとしても、表現のバリエーションは無限と言って良いくらいです。

同じ「プロフィール写真」でも「イメージ写真」へ踏み込む表現ですね。



理想の1枚を撮るための「言葉選び」

では、どうすれば満足度と実用性を両立できるのでしょうか?

ここまで分類してきましたが、明確な正解があるわけではありません。 大切なのは、撮影前にイメージを共有することです。

曖昧な言葉をそのままにせず、あなたが欲しいのは「情報のプロフィール」なのか「物語のイメージ」なのかを考えましょう。

そしてそのイメージは「ハウススタジオ」がベストなのか、或いは白ホリスタジオがベストなのか、目的に合った環境を選ぶことが大切です。

私はカメラマンとして、その「言葉にならないイメージ」を形にする手助けをしたいと思っています。


とにかく、コミュニケーションです。

あなたが必要としている写真は『プロフィール写真』か『イメージ写真』か?

まずは「使える1枚(プロフィール写真)」を確実に押さえる。

その上で、目的を絞った「攻めの1枚(イメージ写真)」へ移行するステップアップ。

そして、あなたに「これは何に使うためのカットか」を常に問いかけるコミュニケーションを密に取りながら撮影を進めましょう。



10年後も「撮って良かった」と思える写真を。

〜写真は「完成品」か、それとも「素材」か?〜



現場での喜びを、そのまま『長く使える価値』に変えるのが私の役割です。

撮影した写真は、それだけで完成された一つの世界です。

しかし、音楽活動という文脈においては、時にそれは『未完成の素材』であるべきだということも、ぜひ知っておいていただきたいのです。

現場のノリで『いい感じの雰囲気』に流されるのは楽しいものです。

けれど、その写真が1ヶ月後、半年後のあなたの活動を本当に助けてくれるのか? 私は常にそこを考えてシャッターを切っています。


ライティング一つ、小物一つで、スタジオはどんな物語の舞台にもなります。

だからこそ、その物語がどこへ向かうためのものなのか。

撮影の前の、ほんの少しの『言葉のすり合わせ』を、これからも大切にしていきたいと思っています。



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ぜひ、レッスン室や自室に飾って下さい。

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