【Silver & Sound -音楽家を刻む銀塩写真】モノクロフィルムで撮影する音楽家
- とまるおさむ
- 1 日前
- 読了時間: 3分
#003:忘れていた一枚が、教えてくれたこと
〜モノクロフィルムで撮影したカフェマスター〜

「新天地への同伴者」としてモノクロフィルムで撮影した写真を贈った
先日、10年以上前に撮影したある一枚の写真を見つけ、じっと見つめていました。 まだプリント技術を追い求めていた頃、友人の紹介で撮らせてもらった小さなカフェのマスターの姿。 当時は無我夢中でシャッターを切りましたが、今見返すと、そこには私自身の迷いや、マスターの静かな覚悟が、今の私よりも雄弁に写り込んでいました。
今現在、このカフェは存在しません。
この写真を撮影したしばらく後に新天地へと移転されました。
この時はまだその事を知りませんでしたが、後になってこの写真が良い記念になってもらえたのが嬉しかったのです。
「語らずとも伝わる」職人の矜持
立ち上がるハーブティーの湯気と、丁寧に作られた人参ケーキ。 その優しさに甘えながら、私はカウンター席に座り、
マスターが話すハーブの話で時間を忘れた。 私も趣味の程度でガーデニングを楽しみ、ハーブもたくさん育てていました。
マスターは自分よりもずっと深い知識を持ちながら、静かに私の言葉を拾い上げてくれる。 そんなマスターの『聴く姿勢』を、私は二眼レフの四角い枠に閉じ込めたかったのかもしれません。
口数が少なく物静かなマスターにとって、この写真は「自分はこういう人間です」という自己紹介を代わりにしてくれるツールかもしれません。
マスターはこの写真を大変気に入ってくれました。
マスター自身がこの写真に「自分自身の本質」を見出したからこそではないでしょうか。
背景が景色を変える、という「気づき」
人参ケーキとハーブティーの味、
そして、自分を立てて聞き役に徹してくれたマスターの謙虚さ…
写真を見ながら、ボンヤリとした記憶が蘇りました。
それこそが、まさにこの写真の背景に流れている「音」であり「温度」です。 それによって同じ写真でも「背景の景色が変わった感覚」になります。
久しぶりにこの写真を見て「景色が変わった」と感じたのは、当時の味覚や会話の記憶が、モノクロフィルムで撮影された写真の中に溶け込んでいたからではないでしょうか。
5年後、10年後のあなたへ贈る「手触りのある記憶」
デジタルで毎日何百枚と流れていく画像は、記憶を上書きしてしまいます。
しかし、こうして数年後に「あ、あの時のハーブティーは美味しかった」と思い出させてくれるのは、質量を持ったプリント写真の力です。
モノクロフィルムで撮影したネガを暗室でプリント一枚の写真…
それは「あなたの今を、未来のあなたが救い出すためのタイムカプセル」


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