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【Silver & Sound -音楽家を刻む銀塩写真】モノクロフィルムで撮影する音楽家

#026 原点回帰 〜 1枚のレコードジャケットが教えてくれた光と影


ウィントンマルサリスのデビューアルバムと我が愛機


なぜ今、モノクロームなのか?

その答えは、中学時代の私が見つけた。


デジタル全盛の今、なぜ私はあえてモノクロームで、しかもアナログにこだわるのか。

その理由を紐解こうとすると、決まって一人の若きトランペッターの横顔に突き当たります。

吹奏楽部でトランペットに明け暮れていた中学生の私にとって、ウィントン・マルサリスの登場は事件でした。

20歳の彼の天才性と、クラシック・ジャズ両面での衝撃。

少し背伸びして買ったレコードの重み。

音だけでなく「ビジュアル」から受けた、えも言われぬ刺激。 ジャズの基本も知らない当時の私ですら、それを肌で感じることができました。




ジャケットという名の「教科書」

モノクロフィルムで撮影されたザラついた粒子に宿る、圧倒的なリアリティ


今やYouTubeを叩けば、当時の彼の音を即座に聴くことができます。

しかし、何かが決定的に違う。

それはきっと、31センチ四方のジャケットを両手で保持し、そこに刻まれた『意志』を指先と目から吸収するプロセスが欠けているからでしょう。

当時は理屈なんて分かりませんでした。

でも、このモノクロームのジャケットを食い入るように見つめていたのを覚えています。

フィルム特有の粒状感(ザラつき)と高いコントラストが生む「凄み」。

ピントの鋭さと、背景に溶け込む被写界深度の絶妙なコントロール。

「質感」が語る、音楽の温度感。

全てはモノクロフィルムで撮影されたこの写真に集約されていました。



現在へと続く一本の線

今、再びファインダー越しに追い求めるもの


モノクロフィルムの現像を始めたあの頃の私と、今の私は、実は同じ光を追いかけているのかもしれません。

アナログモノクロームでトランペット奏者を撮りたいという現在の衝動。

それは単なる懐古趣味ではなく、このジャケットで感じた「魂の震え」を再現したいという決意であることなのだと思います。



ジャケット写真は「音楽の入り口」


ジャズの良さも、ましてや酒やタバコの本当の味も分からない年頃。 それでも、理屈抜きにそのサウンドに身を委ね、少しだけ背伸びをしてみる。 思えば、あの頃の私が感じた『心地よさ』は、知識ではなく本能でその本質を感じ取っていたのかもしれません。

私にとってジャケット写真は、単なる包装ではありませんでした。

それは音楽の世界観を視覚化した『入り口』であり、針を落とす前に音を想像させる装置でもあったのです。

だからこそ今、私はその『入り口』を、自らの手で、モノクロームで作り上げたいと願っています。



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